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日本の狂犬病予防対策

 日本における狂犬病対策としては、現在、次のような動物に対する衛生措置が「狂犬病予防法」に基づき実施することとなっています。
(1)「発生予防対策」として、
①飼育犬の登録と定期予防注射
②未登録犬の捕獲と抑留
(2)「侵入防止対策」として、犬、猫等の特定動物に対する輸入検疫
(3)「発生時のまん延防止対策」として、
①狂犬病感染動物の隔離
②飼育犬の移動制限と一斉検診・強制予防注射の実施    など
日本のような狂犬病清浄国において実行すべき対策として重要なのは、
(1)海外からの感染動物の侵入防止を図るための輸入検疫
(2)国内対策として国内飼育動物の発生予防対策(登録・注射)を徹底
すること
により、狂犬病侵入時のまん延防止に備えることにあります。
しかしながら、
・ 「輸入検疫」については、犬に加え、猫、アライグマ、スカンク、きつねが狂犬病の検疫対象動物に追加されましたが、
①依然として検疫対象は一部の動物であり、また、げっ歯類動物を中心とした野生動物対策が未整備であること
②外国船舶に搭載された犬の不法上陸事例が頻発する等、現状の輸入検疫による侵入防止には、自ずと限度があること
・「発生予防対策」については、家庭動物としての犬の飼育頭数が増加する中、飼育犬の全数把握としての登録と定期予防注射は、いずれも周知・徹底されておらず、登録率は5割水準、定期予防注射の実施率は、実に4割を下回る低水準にあると見込まれます。
<狂犬病予防対策の課題>
(1)狂犬病の予防対策において、感染源となる動物に対し、予防注射を実施し 免疫を付与することにより流行を防止するためには、WHOガイドラインにおいて、少なくとも70%以上の免疫水準を常時確保する必要があるとされています。
(2)狂犬病予防法においては、犬の所有者に対し市町村等自治体に「犬の登録」を行うことと毎年の「定期予防注射」を受けることが義務付けられています。人に対する狂犬病の感染源として、国内の飼育犬について登録の徹底と定期予防注射を行うことにより、常時一定レベルの免疫付与を行い、狂犬病侵入時における動物間での流行防止と伝播経路の遮断のための措置を講じておく必要があります。
(3)また、狂犬病予防法に基づく狂犬病対策については、広く国民的理解の下で推進する必要があります。狂犬病の最終発生から50年が経過する中で狂犬病のリスク管理に対する意識が低下することなく、また、犬を飼育される方が狂犬病に対する正しい知識をもっていただき、狂犬病の予防対策が犬の所有者の責務として定着するよう一層の理解を深めていく必要があります。
(4)犬による咬傷事故は、毎年、届出だけでも6,000件以上が報告されています。万一の侵入事態に遭遇した場合、現行の予防注射の実施率では社会パニックを引き起こしかねません。
(5)犬の飼育者自身が愛犬を守ること。そのことが人の命を守り、社会を守ることにつながります。

○近年における日本での発生状況

 国内での感染が確認されなくなって以降(昭和32年)、日本で狂犬病が発症した事例は3件で、ともに日本国外での感染であります。
•1970年にネパールを旅行中の日本人旅行者が現地で犬に咬まれ、帰国後に発病、死亡した事例。
•2006年に京都府在住および神奈川県(2年前からフィリピン滞在)の60代の男性2人がフィリピン滞在中に犬に噛まれたことが原因で帰国後に狂犬病を発症し、2人とも死亡した事例であります。京都での感染事例では、医療機関受診時点で既に脳炎症状を発症しており、病歴の正しい聴取が困難だった可能性が報告されています。

 日本では、狂犬病は「感染症法」に基づく四類感染症に指定されており(感染症法第6条第5項第5号参照)、イヌなどの狂犬病については「狂犬病予防法」の適用を受け(狂犬病予防法第2条参照)、また、ウシやウマなどの狂犬病については家畜伝染病として「家畜伝染病予防法」の適用を受けます(家畜伝染病予防法第2条及び家畜伝染病予防法施行令第1条参照)。